戦国時代に凛と咲いた華

みなさま、もう9月になりました。

昼間はまだ蝉の声が聞こえてきますが、

夜になると虫の声が聞こえます。

これからの京都は、1年で最も観光客が増える時期に

なります。

今日は、三十三間堂近くにあるお寺「養源院」を

ご紹介いたします。

 

 

豊臣秀吉の命により自害を命じられた、

北近江の戦国武将・浅井長政。

その供養のために、長政の長女だった

淀殿の建てた供養寺が

京都にある「養源院」です。

ところがこの養源院。浅井家ゆかりの寺と

いうだけではないのです。

 

 

血染めの天井、

今にも飛び出してきそうな幻想的な絵画、

美しい音色を奏でる廊下…。

こんな見どころ満載のお寺でもあるんです。

養源院とは、淀殿が1594年、

父・浅井長政の供養のため

21回忌に建てたお寺です(養源院とは長政の院号)。

淀殿と言えば、浅井三姉妹の長女。

 

浅井三姉妹とは、浅井長政と、戦国一の美女と謳われた

織田信長の妹・お市の間に生まれた子供たちのこと。

また淀殿は、秀吉の側室としても有名です。

お江は秀吉の政略結婚に利用され、徳川家へと嫁ぎました。

その後1615年、

大阪の陣で淀殿(豊臣方)VSお江(徳川方)と

敵対同士になった両姉妹。

ここで淀殿は戦に負け、豊臣秀頼と共に自害したのです。

淀殿享年47歳。

姉の淀を失ったお江は翌年の1616年、

養源院にて戦没者の供養を営みました。

しかし、養源院はその後1619年に

落雷による火事で焼失し、1621年にお江が再興します。

その際、伏見城の遺構の一部を移築します。

お江はいくつかの変遷をへて、

豊臣秀頼に嫁ぐ千姫をはじめ二男五女をもうけます。

その中、五女として生まれた和子(まさこ)が、

次期天皇を生むことになり、

お江は大きな影響力を持つことになります。

その後1626年、江戸城西の丸にて死去。

お江享年54歳でした。

浅井三姉妹の中では最長命となるお初は、

夫の京極高次を亡くして以降出家。

その後姉と妹が敵同士となった際、

両家の和解に奔走します。

常高院と名乗り、晩年は京極家の江戸屋敷で

静かに息を引き取りました。

享年64歳。

乱世に翻弄されながらも、生き抜いてきた三姉妹。

彼女たちがどんな思いで、養源院を守ってきたのか、

ここへくれば垣間見られるはずです

 

 

さて、浅井三姉妹の生涯はさて置き、

養源院について少しお話ししましょう。

養源院は一度消失し、お江が再興させます。

その際、落城した伏見城を建材に使用しました。

伏見城「中の御殿」から移築されたものが、

養源院の本堂です。

黒々とした不気味な模様が、天井に見て取れるはず。

これがかの有名な養源院の「血天井」です。

 

実は、伏見城落城の際、

自刃した武将たちの血のりと脂の浸みた板。

これが天井に使用されました。

もちろん、何でもいいから天井に使おうと、

むやみに血のりのついた板を使用したわけではありません。

そこには忠義を誓った美しくも悲しい話があるのです。

養源院に来ると、ガイドさんが棒で天井を指し示しながら

解説してくれます。

「ここに顔が、ここから肘が伸びている様子、

片足はあぐらをかいて曲がったまま…」

その説明を聞きながら目を凝らしてみていると、

まさにあぐらをかいて自害し、臥せった武将が、

ありありと浮かんでくるのです。

歴史の渦に、自分まで吸い込まれそうな、

何とも不思議な感覚。不気味でありながら

ひどく物悲しい血天井に、しばし心を奪われるはずです。

もう一つ養源院では見どころがあります。

 

 

それは俵屋宗達の杉戸絵です。

養源院の、伏見城から移築された牡丹の間には、

狩野山楽の牡丹の折枝の襖絵があります。

ほとんどの襖絵を狩野派が手掛けていた時代。

当時無名だった扇絵職人・俵谷宗達はこの養源院にて

描いた杉戸絵が、名を轟かせるきっかけになりました。

俵谷宗達と言えば、「風神雷神図」が有名ですが、

この原点となったのが、養源院の杉戸絵なのです。

 

足を蹴り上げ、杉戸の中から今にも飛び出してきそうな

唐獅子

 

 

。白象や麒麟など、躍動感に溢れ美しい曲線美を見せる

この絵は、素晴らしいの一言に尽きます。

現代アートと言っても過言ではないほどの

斬新なスタイルは、見るものの心をとらえて離しません。

重要文化財に指定されており、

12面の襖絵は本堂の松の間に。

杉戸絵白象図、唐獅子図、

波と麒麟図は2面づつ8面に渡ります。

白象は普賢菩薩の乗りもの。獅子は文殊菩薩の乗りもの。

この両菩薩は釈迦如来の脇士(わきじ )として知られています。

自刃した武将たちの魂が少しでも安らかになるよう、

この動物たちが描かれたのだとも言われています。

いかがでしたか?

一度訪ねてみようと思われましたか?

清水寺、壬生寺などメジャーなお寺では

味わえない魅力を発見してみてください。

ご案内は、裕華でした。

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裕華

裕華

歴史の都、京都に生まれてからずーっと住んでいます。 学生時代は海外に憧れ、大学で語学を学びました。 現在は不動産会社で、事務員をしています。 時々、休みを取って趣味のダイビング旅行を楽しんでいます。 とってもアクティブなミドルエイジです。 一度しかない人生を楽しく過ごしたいと日夜努力を惜しみません。 同年代の皆様、素敵な人生を一緒に楽しみませんか?

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